「清潔さがファシズムを生む」という仮説 〜歴史は繰り返す〜 それを防ぐためには…?


一方で、アメリカで起きた911テロ事件以降の管理社会強化の流れの余波は、
日本にもきっと目に見えないところで確実に浸透してきているはずであり、
個人情報保護法案や国民総背番号制などもきっとやがて
なんらかの凶悪事件をきっかけにすんなりと導入されることでしょう。


そんな社会がもたらす最終的な結末は何か?
第二次世界大戦直前の日本の状況の再来ではないでしょうか?


つまり、本書のような冤罪のメカニズムを応用し、
少数派の口封じを確実に行えるシステムが成立した場合、
下手をしたら、格差社会だなんだかんだで国民の間の
フラストレーションが高まる中で、条例だなんだかんだで、
性風俗産業が規制された結果、欲求不満も高まったところで、
「清潔さがファシズムを生む」という言葉通り、
その貧困や性的欲求不満のはけぐちとして、
仮想敵国が見出され、本書のように目に見えない権力が
マスコミを使って戦争こそ現状を打開する最善策だとあおった時に、
戦争が国民の大多数の合意を得た上で、
近い将来に始まってしまうかもしれません。


そうなる前に、ちょっとはマスコミを疑う目を養いましょうね、
というメディアリテラシーの入門書としてもこの本は
充分機能する社会派な作品でもあると個人的には思いました。


その意味では、この作品を読んで面白いと思った方には、
孤高の天才、野沢尚が書いた『砦なき者』を是非読んでいただきたい。


砦なき者 (講談社文庫)

砦なき者 (講談社文庫)


さらに時間がある方には、
砦なき者』の前に『破線のマリス』を是非読んでみてください。


破線のマリス (講談社文庫)

破線のマリス (講談社文庫)


2作品ともにメディアリテラシーの入門書としても適してますし、
もちろんエンターテイメント作品としても一級品です。


特に『砦なき者』の方は、ゴールデンスランバーに負けないぐらい
読み応えがあると思います。


この日記に共感していただけた方や、
野沢尚にも興味を抱いたという方で、
もっと時間がある方は、過去のエントリー


小説の可能性、天才領域など 〜「呼人」を読んで〜
http://d.hatena.ne.jp/kj-create/20051222


呼人 (講談社文庫)

呼人 (講談社文庫)


もあわせてご覧ください。


映画「アフタースクール」も見たんですけど、
感想を書く余裕がなくなっちゃいました。また今度。
こちらも伏線がお上手。面白かったですよ。


せめて予告編をどうぞ!
「甘く見てると騙されちゃいますよ!」
http://www.eigaseikatu.com/trailer/20935/?size=large#title


監督:内田けんじ(『運命じゃない人』)
主演:大泉洋 佐々木蔵之介 堺雅人 常盤貴子 田畑智子


公式サイトは、
http://www.after-school.jp/index.html