近況メモ
(今回の連続)
・第51回江戸川乱歩賞受賞作「天使のナイフ」を一気に読了。作者は薬丸岳。
これは面白かった。伏線の張り方が見事、特に小道具の万華鏡の使われ方には脱帽した。
万華鏡は、最初はただ単に古き良き思い出として登場した小道具であり、
伏線のふの字も彷彿させなかったのに、後半になればなるほど重要な意味を帯びてくる。
それでいて、少年法をテーマにした作品としての完成度もまた高い。
読んでいてタメになるのだが、それが本文に必要な要素としてきっちり
うまくはめ込まれており、情報としての価値が小説のエンターテイメントとしての価値の
足を引っ張らず、むしろ小説にのめり込むための強力な武器となっている。
情報性とエンターテイメント性は現代小説の2大要素だと思うが、
この2つの要素のバランスはとても難しいというのが私の実感である。
その点でこの作品は大成功しており、オススメです。
・かつて私が敬愛する村上龍は、「小説の本質は(広義の)情報だ」と言っていた気がする。
もちろん、村上龍が「情報」というからには、単なるinfomationインホメイションとしての
情報ではなく、inteligenceインテリジェンス(=生きる智恵)としての意味なのだろう。
なるほど、たしかに一理ある。「小説」を読むことで、人生を生きぬくための指針・智恵
が得られるという期待をもって読んでいる人々がいるのは、自分もある程度そういう期待が
「小説」にあるので納得できる。ただし、その要素が行き過ぎていても問題はある。
情報性が小説そのものの面白さを台無しにしてしまう可能性が結構あると思う。
以下 つづく・・