靖国参拝は、「第二次世界大戦後の世界秩序に対する挑戦状」以外の何者でもない
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「首相の靖国参拝」は「日本国民は戦争がしたいと思ってます」宣言と同じだ、という仮説
http://d.hatena.ne.jp/kj-create/20140211
まず、誤解を避けるために、私の立場を簡単に述べておきたい。
私は自分のことを「愛国者」の一人だと思っている。
靖国神社に祭られている、戦争で亡くなられた、名もなき英霊たちの魂が浮かばれてほしいと
心の底から願っている。だから感情論としては、安倍首相の靖国参拝を支持したい気持ちもある。
それでも、「愛国者」の一人として、自分を「愛国者」だと思っている同胞、仲間たちたちに対して、
「本当の愛国者が取るべき行動は何か?」「何が本当の日本の国益なのか?」
「靖国神社の英霊たちが本当に望んでいることは何か?」
を問いかけたいと思っているだけである。
話を元に戻す。靖国参拝の一番の問題点は、
靖国参拝は、「第二次世界大戦後の世界秩序に対する挑戦状」以外の何者でもない、
とどうやっても外国からは思われてしまうということである。
注)この「外国」というのが「韓国」「中国」だけではない、というのが最大の問題である。
むしろ、われわれが手を取り合い、仲間として歩んでいくべき「アメリカ」「イギリス」
「フランス」「ロシア」からも、上記のように思われてしまうことが問題なのである。
では、一体、なぜ外国から、そんなふうに誤解されてしまうのか?
それは、日本人が「The United Nation」=×「国連」○「連合諸国」がどういうものなのか?
を理解できていない、というのが最初のポイントである。
今の世界秩序(ワールド・オーダー)は、第二次世界大戦の戦勝国(=連合国側)が作ったものであり、
(起きてほしくないが)第三次世界大戦が起きて、新たな戦勝国が生まれるまでは、
第二次世界大戦の戦勝国(=連合国側)が正義、敗戦国(=ドイツ、日本、イタリア)が絶体悪である
という世界観を土台にして、世界秩序が作られ、現在も世界の安定を保っているという現実がある。
その現在の安定を保つための場が、第二次大戦の戦勝国、つまり「アメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国」の
5大国が強い決定権(&その裏返しとしての拒否権)を持つ「国連(という名の戦勝国連合=連合諸国=The United Nation)の
安全保障理事会」である。「国連」などと訳すから、純朴な日本人は「国際社会の正義を実現する場だ」などと勝手に国連に幻想を抱くが、
実態は何のことはない、「(日本(の戦犯者)やドイツのナチスを悪とみなす戦勝国連合が)正義を実現する場」にすぎない。
核不拡散条約というのは、「世界から核兵器をなくしましょう」などではなく、
「安全保障理事会の5大国(=現在の世界秩序を守っている正義の国)以外の国が核兵器を持つことは許しません!」という
宣言にすぎないのであり、安保理の5大国以外の国が核兵器を持とうとしたり、領土を拡張しようとしたりして、
現在の世界秩序を乱すような行動をとろうとすると、国際的強制執行=軍事制裁が「正義」の名のもとに行われるのである。
かつての朝鮮戦争の国連軍とか、湾岸戦争の多国籍軍などが、これにあたる。
そして、日本が今置かれている状況が外国からどうみなされているかというと、
かつて、第二次世界大戦で敗北した「悪の大国」日本は、
戦後のサンフランシスコ平和条約を批准した際に、
・人道に対する罪
・平和を犯した罪
を認め、同時に「戦犯者」たちの責任=罪を認めた上で、
国際社会(現在の第二次世界大戦の戦勝国が作り上げた世界秩序)に入れてもらった。
それ以降は、平和憲法を掲げ、現在の(戦勝国が作った)世界秩序を肯定し、頑張るのは経済だけにします。
という宣言のもとで発展してきたからこそ、経済摩擦などはありつつも、許されてきたという経緯がある。
ところが!である。そんな「現在の(戦勝国が作った)世界秩序を肯定します」と言っていたはずの日本が急に
「今の世界秩序は、日本が虐げられている」「そんなものは認められない」
「われわれは誇りを持って戦後レジームを解体する」などと言い出したから、世界は驚いているのである。
かつて、その「罪」=「責任」を世界に向かって認めたはずの存在であるA級戦犯が祭られている靖国神社を
日本の首相が参拝するということは、無自覚なわれわれ日本国民や、さらには安倍首相自身も気づいていないかもしれないが、
現在の世界秩序を作っている戦勝国連合=国連安保理から見れば、
サンフランシスコ条約で一度は認めたはずの「戦争の罪を日本はやっぱり認めない!」
「第二次世界大戦後の世界秩序が間違っているんだ!」「間違った現状を正すべく日本はこれから毅然とした態度をとる」
つまり、「現在の(戦勝国が作った)世界秩序に対する挑戦状」を叩きつけられているように感じられてしまうのである。
言い換えれば「日本国民の代表である日本の首相が靖国参拝をすると、1945年以降に国連(UN=連合諸国)が作り上げた
世界秩序を日本(国民)は転覆しよう思っていると外国からは無条件で解釈されてしまう」ということである。
だから「靖国参拝問題」は「内政干渉」などでは決してすまされない。
世界の安全保障を揺るがす大問題だと外国からはみなされるからである。
現在の世界秩序(=戦勝国連合)にとっては、「ドイツのナチス」と「日本の戦犯者」を肯定する行為は、
なにがなんでも絶対に、決して許せない、看過できない問題なのである。
なぜなら、現在の世界秩序は、「ドイツのナチス」と「日本の戦犯者」を「絶対悪」と定めたうえで成り立っている秩序だからである。
「ドイツのナチス」と「日本の戦犯者」は、ドラクエやFFなどのRPG(ロールプレイングゲーム)のラスボスと同じ、
絶体悪だ、という世界観の世界をわれわれは生きているんだ、ということを決して忘れてはならない。
せっかくラスボスを倒して、世界に平和が戻ったと思っていたのに、ラスボスを再び崇拝する集団が現れた、
ということを勇者(主人公)が知ったらどうなるであろうか?再び「悪の集団」は成敗されてしまうのである。
では、ラスボス側が、正義になれる日は来ないのか?そんな絶望から来るうめきが日本の靖国参拝を応援する声の正体である。
ゲームでは絶対にそんな日はやってこない。しかし、現実には、日本が「正義」になる可能性はゼロではない。
今から怖いことを書きます。
日本が「正義」になる方法、それは、日本が第三次世界大戦を起こし、戦争に勝って、戦勝国となった上で、
現状とは違う、新たな「世界秩序=日本も戦勝国側として安保理に入る状況」を作り上げることです。
つまり「首相の靖国参拝」や「戦後レジームからの脱却」が外国に向けて放つメッセージは、
「日本は今の世界秩序が気に入らない!」「この虐げられた状況を打破するためには、かつて間違って戦犯と名指しされた
人たちの名誉を回復するためにも、もう一回戦争してやるぞ!」と宣言しているのと同じだと外国人の目には映るのです。
では、なぜこれが「いけない」と愛国者の一人として私は感じるのか?
それは、上記のように外国から思われるのが、日本の「国益」にとって「損」でしかないと思うからである。
このままでは、日本は「孤立」してしまう。
戦略的には、現在の世界秩序を作っている中国以外の戦勝国連合(アメリカ・イギリス・フランス・ロシア)を味方につけて、
中国を「孤立」させなければ、日本が生き残る道はない、と思うからである。
そして「日本の孤立」こそ「負ける戦争」そして「破滅」への道である。
かつて、日本は、「満州を返還せよ!」と当時の国際連盟から全会一致で勧告され、
腹を立てて、国際連盟を脱退した頃から「破滅への道=孤立」が始まりました。
さらには、当時の国際世論を無視して、南部仏印進駐をしたことにより、
ABCD包囲網がしかれ、文字通り「孤立」し、追い詰められ、
最終的にはアメリカとの戦争に突入させられていきました。
「孤立」した結果、多くの人たちの命が戦争で失われたのです。
実は、第二次世界大戦前の日本国民は、ほとんどの人が、
当時世界一の国だったアメリカと戦争するなんて夢にも思ってなかったといいます。
それなのに、気づいたら、アメリカとの戦争が始まっていた。
その原因は、「世界の趨勢(=現在の世界秩序)に逆らってはいけない」という
世界を貫く法則を日本人が島国根性で理解していなかったからです。
これは、今の日本の状況と全く同じです。
「靖国神社の参拝ぐらい許してくれたっていいじゃねえかよ」という甘えた考えは、
日本の外では全く相手にされません。
だって現在の世界秩序に対する挑戦宣言を意味するのですから、許されるわけがないのです。
もっと怖いことを書きます。
ということは、もし、この先、日本が現在の世界秩序に敵対的な態度をとった状態のまま、
つまりは「靖国参拝=過去のA級戦犯を崇めること」は正しいと主張して譲らない状態のまま、
尖閣諸島に中国が攻め込んでくるなどして、中国と日本の軍事衝突が起こった場合、
アメリカは何らかの理由をつけて、(現在の世界秩序にはむかう)日本を助けようとせず、
静観しようとするのではないでしょうか?そして、万が一、そんな事態に陥った場合、
自衛隊が応戦するも、さすがに日本だけでは対抗しきれず、
その結果、尖閣諸島は中国に占領されてしまうことでしょう。
「これはひどい!」「中国の許されない蛮行だ!なんとかして下さい!」と日本が国連(=UN=連合諸国)に
陳情するものの、占領後に(安全保障理事国の一つである)中国が尖閣は元々自国の領土だと主張し続け、
仲裁に入った国連安保理の5大国から、もし、再び「日本こそが悪だ」と判定され、
「尖閣諸島は中国領だ」と安保理が決めたから従え!と言われたら日本はどう行動するだろうか?
怒って国連を脱退してしまうのではないか?これでは1933年の国際連盟脱退の時と全く同じ流れである。
そうしたら第二次世界大戦に突入した時の二の舞になってしまうのではないか?
というのが、首相が靖国参拝を世界に向けて肯定し続ける以上、現在起こりうる最悪のシナリオである。
そんなバカな!日米安保条約があるからアメリカが守ってくれるはずだろ…。
本当にそう思えますか?靖国参拝をすることは現在の(戦勝国が作った)世界秩序への挑戦状なのです。
アメリカは、挑戦状を叩きつけた日本を、出来の悪い子どもを持った親のように、やれやれ、といいながら
助けてくれるのでしょうか?
バイデン副大統領は、靖国参拝を受けて、この件に関してなんと言っているか?
これは、軍事衝突が起きても直接は日本を助けない。
助けるとしたら、軍事衝突が尖閣よりも広がりそうになった時に、
仲裁役だったらやってあげよう、という意味ではないでしょうか? おそらく在日米軍は動きません。
本当に「首相が靖国参拝を肯定する」状況のままで日本はアメリカに守ってもらえるのでしょうか?
世界の趨勢(=現在の世界秩序)にはむかって敵に回すといいことは一つもないのです。
そうではなくて、「中国こそ、現在の世界秩序を乱す存在だ」と主張して、残りの安保理大国4か国を
日本の味方に引き入れておかないと、上記のシナリオは悪夢として現実のものになってしまいます。
そのために日本が出来ることは、本音としてはいやでも、「靖国参拝は間違っていた」と訂正し、
これ以降、二度と「日本の首相になった者は靖国参拝をしない」というルールを守ることです。
愛国者であればあるほど、「首相の靖国神社参拝」が本当に「国益」にかなう行為なのか?を
自問自答すべき時が来ているのではないのでしょうか?
第二次世界大戦の経験者が年々亡くなられていき、どんどん当時の様子を知っている人が
日本から減っていっているのが現状です。
戦争経験者の記憶が世の中から失われつつある今、
日本は再び「孤立→負ける戦争」という同じ間違いを繰り返すのでしょうか?
靖国神社に祭られている(戦犯以外の)英霊たちは、そんなことを望んでいるのでしょうか?
本当の愛国者ならば、首相の靖国参拝を絶対にやめさせるべきだし、
それが日本の真の「国益」なのではないでしょうか?
また、それでも「首相の靖国参拝を支持する」という方には、
あなたは世界を敵に回して戦争をする覚悟があった上でそう言っているのか?
今、日本が第三次世界大戦を起こして、世界の大半を敵に回して
日本が勝てると本気で思っているのですか?
そして、この先自分が戦争に行ったり、日本が戦場になったりする覚悟は出来ているのですか?
と問いかけたい。勇ましいことを口でいうのは簡単である。
本当にそう思っているのならば、自衛隊に入ってから主張していただきたい。
自分は戦争したくない、戦場に行きたくないという気持ちが少しでもあるならば、
絶体に首相の靖国参拝を認める態度、発言をしてはならないと私は思う。
本日はここまで。
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